The Last of Us レビュー(4/5点) ※ネタバレなし
2013年6月20日発売のPS3ゲーム「The Last of Us(以下、TLoU)」についてクリアしたのでレビューする。良いゲームだし、アプリ開発以外もたまには記事にしよう。
■評価
4 (5点満点中)
■クリア時間
15時間(中級クリア、やりこみなし)
■Good
荒廃した世界観
精緻なグラフィック
柔軟な戦闘システム
■Bad
武器の強さのばらつき
一部の敵の攻撃で一撃死するバランス
一本道の物語
いまいち緊張感のない主人公たち
TLoUは、人間の脳に寄生する菌の感染拡大により社会が崩壊した近未来のアメリカで生きる人々の物語である。かろうじて生き残った人類は、ゾンビのような感染者や人間狩りを生業とするハンターに怯えながら、這いつくばるように日々を過ごしている。
この設定だけでワクワクするよね、なんて素晴らしい世界なんだろうね（棒読み
ゲームを始めてすぐに気付くのはグラフィックがすごいことだ。今さらグラフィックとか……と思う人もすごいと思うほど綺麗だ。登場人物の表情も自然で、舞台や背景なども丁寧につくりこまれていて、海外ドラマを見ているような気分になる。
また見た目が綺麗なだけでなく、ゲームに関わる要素まで再現していて好感が持てる。地面に落ちているものを踏めば音が立って敵に見つかってしまったり、雪の上の足跡や血痕を追っていくこともできる。
ゲームの雰囲気としては、「北斗の拳」や「Fallout」のような世界観と、「SIREN」のようなゲーム性を合わせた感じである。隠れて敵の位置を把握することの重要性、クセの強い敵、貴重な弾薬などの要素がそう感じる理由だ。
もっとも、TLoUは「SIREN」のようなステルスだけでなく、戦闘も洗練されていて楽しめる。やり過ごしてもいいし、各個撃破してもいい、ゴリ押ししてもいいと柔軟に感じた。レンガや空き瓶などを使って敵の気を逸らすことと、手持ちの武器を使い分けることが重要である。
ただし、強い武器と弱い武器のばらつきがひどい。改造した近接武器や斧、火炎瓶、火炎放射器は強力でどのステージでも有効だが、拳銃は頭を撃たない限りパンチ一発よりも弱いし、ショットガンはかなり近距離でないと敵を即死させられない。よほど切羽詰まっていない限り、隠れて回りこんで近接戦に持ち込んだほうが武器を消耗しないうえに確実なので、銃撃戦の価値が相対的に低くなってしまっている。
また、病気が進んだ感染者の攻撃を受けると一撃死してしまう。感染者は近接戦闘しかできないので、気付かれないように進むか、接近させないように銃を使って対処するのが無難だが、ゲームに慣れるまでは喉を喰いちぎられる映像を何度も見ることになるだろう。途中から感染者に反撃する方法も追加できるが、その頃にはプレイヤーが感染者をやり過ごせるようになっていて使い道の少ないスキルになるので、この辺りのゲームバランスの調整が欲しかったところだ。
あと欠点と呼べそうなところは、物語が一本道であることか。私としては物語の流れに最後まで違和感なく楽しめたのだけれども、人類の未来という大きなテーマを扱っていることもあり、二周目、三周目で違う選択を見たかったという気持ちはある。
それとせっかく控えめな描写で現実感を醸し出しているにもかかわらず、演出が過剰なところがあるのもがっかりする。敵の領域内で呑気に会話するのは興醒めだった。もっとも、それは些細なことだろう。ゲームに没入できるほど世界観がつくりこまれている証拠といったほうがいいかもしれない。
最後に、バグが多いという噂はあるが、私は特に問題なかったし、世界観からゲームシステムまで細部に渡って丁寧につくられていることが伝わってくるゲームだった。
難易度が中級でもアクションの腕はそれなりに求められるし、始終、重苦しい雰囲気の中で冒険をしていくので万人向けではないかもしれない。しかし、楽でもなく明るくもないからこそ、ゲームを進めていく過程で、人とは何か、仲間とは何か、本当に大事なものは何か、など色々なことを考えて胸に残るものもたくさんあるだろう。感情移入しすぎかもしれないが、良いゲームはプレイヤーに娯楽を与えるだけでなくあるテーマについて考えることを自然に促すし、このゲームもそういう価値のある作品であることは間違いない。
ゆえに、こういう世界観が好きな人や、重厚な物語を求める人はさっさと買って遊んで幸せになるが良いというのが、この作品に対する私の評価である。
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